2007年BLちょっとだけ感想&デキゴトロジー 6
02 06, 2008
![]() | 番人 (ビーボーイコミックス) (2007/10/10) 国枝 彩香 商品詳細を見る |
「2007年BLちょっとだけ感想&デキゴトロジー」です。これは私が昨年読んだBL作品の中で、ちょっとだけ感想を書いておきたい、感想は別に書いたけどそれに補足をしておきたい、本屋さんや舞踏会や友人とお出かけ先などにて、トンデモ事件に遭遇したので報告しておきたい…など、基本的に簡単な感想と、ヨタ話を記したものです。ただし、読んだ作品すべての感想を書くことは絶対ムリ!不可能!なので、一部だけとなっております。←実は映画版「ちょっとだけ感想&デキゴトロジー」を、コピペ修正した前置きだったり…。
…というわけで、「6」です。
「5」に続いて、フシギだったりキワモノだったり、読む人を選びそう、安易に@RECOMMEND@が付けられない作品を選んでみました。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■『もう二度と離さない』 樹生かなめ
ISBN:4062558947 挿絵:奈良千春 講談社 2006/08/02 ¥578
評価:★★★(三振かホームラン。水切り石な樹生作品評価の基準はひとそれぞれ)
つくづく思うんだけど、講談社ってスゴイよなあ。出版社としては最大手の1社なのに、「X文庫ホワイトハート」いう人気BLレーベル持ってるし、その上、樹生かなめの作品をコンスタントに出してくるんだから。…というわけで、木原音瀬さんご在住のアナザープラネットから、正反対の方角に30億光年ほど離れた「かなめ星」にお住まいの、樹生かなめさん2006年の作品。樹生さんって、「変わっている」がホメ言葉、そう云われることがお好きなような気がする。ま、いっか、そんなことは。
で、この『もう二度と離さない』。童顔で幼い印象の司(受)は、体が弱く、高校を中退してサナトリウムで暮らしていた。その庭で、絶世の美男大学生・渓舟(攻)と初めて出会う。そのときから惹かれ合い、やがて恋人同士になるふたり。退院した司は、大学を卒業して画家になった渓舟とひっそり暮らし始める――と、受視点による出会いエピソードから始まるので、私もナルホドふーんそっか…と、詳細がよくわからないながらも読み続け、これどーやってオチづけるの?そのままラブラブで終わるの?樹生かなめにしてはフツー?と、少し意外に思ってたら――うっひゃー!そうきたか!そうきたよ!
そう始まったらそうだと思うじゃない!
だってこれBLだよ!?
ネタバレしたくないので、回りくどい云い方をすると――ポイントは、受視点が最大のトリックになっているということ。いや〜参っちゃったなあ、まさかBLで「トリック」なんて言葉使うとは、思わなかったよ。
そして、樹生かなめ作品がお好きな人にはご理解頂けると思うけども、樹生さんは、「果たしてこの表現が必要なの?」という一文や、固有名詞をしつこく入れてくることが多い。これがまた目くらましになっていて、読み手は余計に振り回される。たとえば、ラブシーンの最中だというのに――
「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ、という猪の突進する音が鳴き声とともに窓の向こう側から聞こえてきた。何度聞いても慣れるものではない。
なんで突然イノシシ?(田舎だから)…「ドドドッ」じゃなくて、「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ」?
樹生節は何度読んでも慣れるものではない(けど、なんか快感だったり?)。
また、冷たいことをサラっと云ってのけるキャラ(なので、絵師が奈良画伯なのも頷ける)と、残酷なストーリーをスルスルっと書いてくるのが樹生かなめの特徴で、それもまた個性なんだろうけど、読んでみるとやっぱ空恐ろしいものがある。ただし後半、残酷な内容がダイアローグによって淡々と片付けられていくのが、ちょっともったいないような。でも逆に、それによって救われているようでもあり――う〜ん。
あー!樹生かなめって(私の)手には負えなーい、わかんねーっ!!
私の書いている意味をお知りになりたい方は、この『もう二度と離さない』をご一読下さい。手放しでオススメは致しませんが、ハマる人はすっぽりハマれると思います。
■『番人』 国枝彩香
ISBN:4862632742 コミック リブレ出版 2007/10/10 ¥600
評価:★★★☆(ウホッ!地球連邦ドンタコス艦クラウス・フォン・コールタール艦長!)
樹生かなめ作品の感想書いたら、力が一気に抜けた…けど、頑張って続きを書くぞ!…というわけで、国枝彩香の短編集『番人』の感想を。
私はとにかく国枝彩香の絵が好きなので、それだけで★★★以上の星をつけちゃうことを抜きにしても、「不細工特集」(すっごいな、よくこんな特集を組んだよ>リブレ編集部)だからと、ここまで徹底して不細工ヅラを描いてくる国枝さんには、マジで敬意を表したい。最敬礼!…ってなんのことかと云うと、最後に収録されている「めぐり逢い…COSMO」、これがまたBL史上初ではないかと思うくらい、気合の入った不細工ヅラの主人公(攻)で、腐女子が持つBL常識を、強烈でゴーインなギャグとともに宇宙の彼方へぶっ飛ばしてくれる。でも顔は不細工かもしれないけど、性格はけっこうカワイイんだよね♪<攻
他の収録作は、国枝彩香らしい「暗さ」と「耽美/JUNE」に満ち、「夢か幻はたまた怪談か」と思わせる内容。耽美な作品だけでなく、希望が残っている作品もあるところが救いかな。こういうJUNEの遺伝子を感じさせる作品ってのは、BLの世になろうと残っていて欲しい。秋に読むとピッタリな短編集。
しっかし…「めぐり逢い…COSMO」には参ったよなあ(わははは!)。最初どう消化すればいいかわかんなかったのに、本を手に取るたび、まず「めぐり逢い…COSMO」のページをめくってしまう。私もそうとうヤバイところまで来てたり?…う〜む。
■『海に眠る』 葛城ちか
ISBN:4537141050 挿絵:えすとえむ 日本文芸社 2007/10 ¥630
評価:★★★★(いろいろ思い出すことの多い世代の方に)
『テイク・ラブ』『銀の鎮魂歌』『奴隷船』『微笑う人魚姫』といった、往年のJUNEでもよく知られている作品を、昨年から復刊させ始めた濃ゆーいレーベル「KAREN文庫 Mシリーズ」より出た短編集。3編収録
ただし、表題作含めそれぞれ掲載されたのは、昭和でなく平成の世(8年〜12年)で、JUNE→BL移行終了期、掲載誌も「JUNE」ではなく「イマージュクラブ」(あったなあ、そんな雑誌)。著者の葛城ちかさんはこれが初めての本だそうで――たぶんKAREN文庫編集部は、雑誌掲載の時点で葛城さんの作品に目をつけ、時が流れてようやく出版にこぎ着けたんじゃ?…じゃなきゃ「イマージュクラブ」から、引っ張ってこないと思うもの。それだけ印象深い作品だったんだろうな〜。なお、この本は「あとがき」がない。今ならつけてもいいし、つけられるだろうに、つけない。う〜んJUNEっぽいー。
表題作は、虐待を受けて育った孤児が殺人を犯して逃亡、その逃亡中に出会った青年によって「人を愛すること」を知り、救済されるが、やがて破滅へと向かっていく――という、なんともJUNE的な作品。読んでて「なつかしー!」トランス状態に陥ってしまった。個人的に気に入ったのは、2本目の「思い出させてあげよう」かな。本来であれば、双子として一緒に生まれてくるはずだった兄が、実体のない幽霊のような存在で弟の成長を見守っていく――という、ちょっとエキセントリックな設定の作品。実体のない兄の一人称で話は進むので(国枝彩香の『番人』も死体の一人称で始まったっけ)、これもまたJUNEっぽいんだけども、ただただ悲劇なのではなく、兄の見守る姿と言動で笑わせてくれたり、キューっと胸をせつなくさせたり、なんとも不思議な余韻を残して終わっていくあたり、そしてその読みやすさが、JUNEというよりはJUNE→BL過渡期らしい作品だなあという印象。須和雪里さんの『サミア』、佐々木禎子さんの『野菜畑で会うならば』(どちらも「KAREN文庫 Mシリーズ」から復刊してもおかしくない)を思い出す、というか。
JUNEには戻れないし、戻りたいとも思わない。でもこういう作品が世に再び出てくると、つかず離れずで来た私でも、やっぱいろいろ振り返って思い出しちゃうんだよなあ…。
以上、「5」でした♪
